大事な人の顔も名前もわからなくなる、忘れたことすら忘れてしまう・・・自分がそんな病いに侵されていくのはどんな気持ちなんだろう。
『明日の記憶』のあらすじ
広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた。銀婚式をすませた妻との穏やかな思い出さえも、病は残酷に奪い去っていく。けれども彼を取り巻くいくつもの深い愛は、失われゆく記憶を、はるか明日に甦らせるだろう!(光文社「明日の記憶-荻原浩」より)
『明日の記憶』の感想
主人公は広告代理店に勤める50歳の男性。
今までバリバリ仕事を行ってきましたが、若年性アルツハイマーに罹患してしまいます。
当初、主人公は「自分はしっかりしている」「問題なんかない」と診断した医師に怒りを感じるほどですが、仕事のスケジュールを丸ごと忘れてしまうなど、徐々に深刻な影響が出てきます。
その過程で主人公の気持ちが大変丁寧に描かれているので、病気を受け入れられない気持ち、記憶をたどろうとしてもぽっかりと暗い穴が広がっているようで何も見つけられないことへの戸惑いなど症状が進行していくことへの恐怖が痛いほど伝わってきます。
私は若年性アルツハイマーという病気の名前は知っていても、具体的にどのようなことが本人と家族に降りかかってくるのかということを知らなかったので、記憶を失う症状が進行していく主人公の内面や、それを受け止めなければならない家族の姿はショックでした。
特に主人公が一人でいる時に、今まで無意識にできていたことができなくなり、助けを呼ぶにも呼べないという緊迫したシーン。
どれだけ本人が混乱して怯え、助けを願っているかが伝わってきて、読んでいて辛いくらいでした。
主人公や家族の姿をリアルに想像するたびに、何度も涙がこらえきれずにボロボロと泣いてしまいました・・・。

病気が進行すれば、家族の顔も分からなくなる、家族との思い出も思い出せなくなる。
そんな未来がすぐ近くまで迫ってきていると感じながら、主人公は家族との時間を過ごします。
主人公と家族の気持ちがどこへ向かっていくのか、寄り添うような気持ちで読み進めました。
ラストは少し暖かい気持ちになるような希望が持てるような雰囲気で終わりますが、それでも病気が治るわけではないので、やはり悲しかったですね。
人生や病気について考えさせられ、また、家族の愛に触れることができる作品です。
読み終わったー!あとでブログ書くけど、取り急ぎ…💦
若年性アルツハイマーになった50歳サラリーマンのお話。
日常を忘れていく。忘れたことさえ忘れてしまっている。
本人も周りもしんどいよね…(´-`)切なくて、悲しくて、読み終わった後にため息が出た。 pic.twitter.com/TY0SzSQlQL
— kisa@読書ブロガー (@livingwithbook) 2018年8月21日
