野球に青春を賭ける高校球児たちを主人公にしたミステリー作品。
『魔球』のあらすじ
春の選抜高校野球大会、エース須田武志は“魔球”を投げた・・・?!
大会後、捕手の北岡が刺殺体で発見され、野球部員たちの心は揺れる。
同時期に東西電機株式会社では爆弾が仕掛けられる騒ぎが。
無関係と思われた2つの事件が次第に絡み合い、ある真実が浮かび上がる・・・。
『魔球』の感想
野球に青春を賭ける高校球児たちを主人公にしたミステリー作品。
孤高の天才投手と言っていい須田が投げた「魔球」や須田を取り巻く人間関係等々がクローズアップされていくのですが、メインは犯人探しというよりは、高校野球という特殊な状況に軸を置いた人間ドラマかなと思います。
野球やピッチャーの重要度が高いですが、現実的にはグラウンドに立つナインがしっかりとそれぞれの仕事をこなさなければ勝利はおぼつきません。
しかしひと口に“高校野球”と言っても、本気で甲子園やその先を目指している層と、部活を楽しめればいい層では明確に意識の違いがあるのでしょう。
天才や有力者がチームに入っても歓迎されることは少なく、むしろ軋轢の原因になりかねないといったリアルな図式が本作では克明に描写されています。
もちろんミステリー作品なので、犯人探しの緊迫感や、東野作品らしい仕掛けを見ることもできますが、本質的には青春もの、それもほろ苦さを含んだ青春ミステリなのではと感じました。
さらに家族愛をテーマのひとつにもしているようで、読者の評判の一部では「感動した」「切なかった」という声があるような終わりかたになっています。
ただ、私は犯人の動機にどうしても納得できず、その展開には腑に落ちない感じが残ったのが正直なところですね。
1990年代の初期の作品なので、最近の東野作品と比べると見劣りしてしまうかもしれませんが、謎解きよりもヒューマンドラマに重きを置いている点など「東野圭吾っぽいな」と感じられる作品です。
『魔球』はこんな人におすすめ
- 甲子園を目指したことがある
- 野球に興味がある
- 少年たちの人間ドラマを見たい
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