「サヨコ伝説」の秘密に迫るハラハラドキドキの展開の中にノスタルジーさえ感じる、恩田陸ワールド全開の作品です。
『六番目の小夜子』のあらすじ
津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。(新潮社「六番目の小夜子-恩田陸/著」より)
『六番目の小夜子』の感想
▼読了直後のツイート
#再読了
六番目の小夜子(恩田陸)9月に読んだばっかだけど、なんとなくまた読みたくなって再読了✨
ホラーか、ファンタジーか、学園ものか…?
複数ジャンルがうまく詰め込まれてて、デビュー作にもかかわらず、恩田陸ワールドが満載なのはさすが(*´꒳`*) pic.twitter.com/RNFDyViKuh— kisa@読書ブロガー (@livingwithbook) 2018年11月18日
恩田陸さんの記念すべきデビュー作でありながら、もう既に恩田陸の世界観が完成されている1冊。
「ノスタルジアの魔術師」と呼ばれるまでになった彼女の原点たる本作は、ドラマ化もされ、ファンの間でも特に人気がありますね。
物語は地方の高校が舞台。そこでは、ある奇妙なゲームが存在していました。
‟3年に1度、生徒の中から「サヨコ」と呼ばれる存在がある方法で密かに選ばれ、選ばれた者は「サヨコ」であることを誰にも知られないよう、学生生活を送らなければならない。”
それは生徒たちの間で、「サヨコ伝説」としてまことしやかに囁かれていました。
そして、ちょうど「6番目のサヨコ」が選ばれる年、とても美しい少女「津村沙世子」が転入して来るところから物語は始まります。
「サヨコ伝説」の秘密に迫るハラハラドキドキの展開の中に、登場人物たちの思春期ならではの心の動きやときめき、いつか失われてしまう青春の一瞬の儚さが、まさにノスタルジックに描かれています。
一見するとホラーやミステリのような雰囲気を持つ本作ですが、恩田陸さんのすごいところは、その要素と青春小説としての魅力をしっかり両立させてしまっている点!
「ホラーなの?ファンタジーなの?」「それとも学園もの…?」と混乱するほど、色々な要素がうまく詰め込まれているのです。
一見すると「ちょっと怖い小説なのかな?」と思うかもしれませんが、いつの間にか物語に引き込まれ、当初抱いた先入観は恐らく杞憂に終わるでしょう。
ミステリアスでノスタルジックな、恩田陸にしか創造し得ない独特の世界観に、ぜひどっぷりと浸ってみてください。
実は番外編小説があります!
あまり知られていませんが、『六番目の小夜子』には番外編小説があるのです。それが『図書室の海』。
短編集になっていて、『六番目の小夜子』に出てくる関根秋の姉を主人公にした物語の他、『夜のピクニック』の前日譚も載っている、読みどころ満載の1冊です。
