実際に読んでみたので、『殺人犯はそこにいる』の中身(あらすじ)と感想をお伝えしていきます!
謎のシークレット本“文庫X”

そもそも文庫Xとは、盛岡のさわや書店で手書きのメッセージが込められたオリジナルのカバーがかけられた状態で発売され、タイトルも著者も内容もわからないというシークレット状態で発売されて話題になった本。
シークレットという発売方法が話題となっただけでなく、本の中身も衝撃的な内容で「読む価値あり!」と大反響を呼びました。
この文庫Xはタイトルを伏せて発売されていましたが、2016年12月9日17時半に「文庫X開き」と題してタイトル解禁がされました。
発端であるさわや書店では17時半にタイトル解禁後、18時半より著者の方のトークイベントが開催されました。
他の書店でも文庫X開きイベントを開催した所も多いようですね。テレビのニュースや新聞でも多く取り上げられました。
文庫Xについて詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
その正体は清水潔さんの『殺人犯はそこにいる』
そんな話題になった文庫Xの正体は、清水潔さんの『殺人犯はそこにいる』というノンフィクション本でした。
『殺人犯はそこにいる』の中身
この本はノンフィクションなので、事実に基づいた中身になっています。本当に起こった事が書かれているのです。
1979年から1996年までの間で4歳から8歳までの幼い少女5人が誘拐され、のちに4人は遺体となって発見。一人はいまだ行方がわからずという事件が発生しました。
しかも群馬と栃木という隣り合った県で、県境を往復するように発生しているのです。これほど狭い範囲で5人もの少女が誘拐・殺害されるという事件。
のちにこの5件は『北関東連続幼女誘拐殺人事件』として同一犯の犯罪だとされましたが、そう簡単に事が運んだわけではなかったのです。
この5件のうち、4件目に起こった事件は俗にいう『足利事件』。のちに冤罪事件として釈放されましたが、既に犯人とされる男性が捕まり、無期懲役刑が決まっている解決済みの事件だったのです。
この時無実の罪で服役していたのは菅家さんという男性です。
DNA鑑定の結果と自白の強要により犯人とされてしまいましたが、誤審である事が判明して再審で無罪が確定しました。
著者の清水記者は菅家さんの服役中から、これらの事件に目をつけ独自で調査を行っていました。
そのうちに5つの事件の関連性に気付き、全て同一犯の連続事件なのではないか、つまり菅家さんは無実なのでは・・・という考えにたどり着きました。
そして菅家さんが無実で釈放されるまでの長い道のりが始まったのです。
しかし、菅家さんが釈放されてそれで終わりではありません。なぜならこれは未解決の『北関東連続幼女誘拐殺人事件』だから。
そう、まだこの事件の犯人は捕まっていないのです・・・。
著者の清水記者は真犯人の存在を明かしています。
独自の調査によってほぼ100%の確率で犯人であろう男性の個人特定までしていると書いています。それでもなぜいまだ犯人は捕まらず未解決のままなのか。
そこには警察の闇や司法の穴などが複雑に絡み合っているよう。詳しくはぜひ読んで確かめてみてください。
読んだ感想
「まさか、これがノンフィクションだなんて・・・」
読み終わった後の感想はコレです。意味わかりますか?
まるで小説やドラマのようなお話なんです。事件自体もそうですが、犯人が捕まっていない現実、警察が必至に隠す闇・・・。
こんな事が現実に起こっているのかと。まるでミステリ小説のようじゃないかと。
恥ずかしながら、私はこれらの事件について知りませんでした。
冤罪事件としてテレビで多く取り上げられていた『足利事件』ですら詳しい事件内容などは知りませんでした。
この本を読まなかったら私はこのまま事件を知らずに過ごしていたでしょう。知れてよかったと思いました。
同時に、知らない事件は山ほど存在しているんだなとも感じました。
そして、毎日のように起こっている事件の“その後”はどうなっているのだろうとも思いました。
凶悪な事件が発生してニュースで取り上げられるたびに「こわいな」「こんな事があったなんて」と、その時は心を動かされるけど、所詮は他人事。しばらく経つと忘れていってしまいます。
その事件の中には犯人が捕まらずに未解決のままの事件もあるでしょう。解決していても、なお苦しむ被害者や遺族の姿があるでしょう。
もしかしたら冤罪事件として捕まっている人もいるのかもしれません。そういう、“事件”を取り巻くリアルを考えさせられた1冊でした。
まとめ~文庫Xとしてではなく
この本は文庫Xとして売られて話題になった本です。でも単行本として発売された当初から注目されていて、様々な賞も受賞しています。
ただあまり売れないノンフィクション作品というジャンルだから、そこまで一般的には知られなかったのだと思います。
でも文庫Xとして売るのはもったいないとさえ思ってしまったほど、素晴らしい中身の本でした。
文庫Xとしてではなく『殺人犯はそこにいる』として数多くの人に読んでもらいたい、そう思える1冊です。
もちろん『北関東連続幼女誘拐殺人事件』が一刻も早く解決する事を願っています。